朝起きて7時くらいには走り出す。夕べは寄宿舎に3人男だけ寝ると思っていたら、俺が寝付いた頃に二人の女性が来て、朝方まで飲んで話をしていた。おまけに朝方になったら一組のカップルは情事に及んだ。眠れない夜だった。昨晩の話では朝起きたら食事をしてから出発したら良いと言っていたが、朝になると俺は邪魔者のだったようで、そそくさと追い出された容だった。夕べはとても親切な人達と思ったが、こんな寄宿舎にはどんな素性の人が居るのか分からないので、カメラを出して写真を撮るのは止めた。只、外に出てから2枚ほど寄宿舎の入り口と材木所の写真を撮ってから走り出す。
すこし走ると日本製の中古車を輸送中と思われるドライバに呼び止められる。ドライバは英語が話せなかったが、いつもの質問、中国人?、どこから来ましたか?、どこへ行きますか? に答える。俺も一人で寂しいがこんなドライバも退屈しているはずだ。大抵のドライバは集団になって輸送しているが、このドライバは一人だった。別れ間際に、ダッシュボードに置かれていたトマトを頂いた。きっと熟すのを待った居たはずに違いないと思ったが、遠慮せずにあり難く頂いた。優しい人だった。
一つの比較的大きな町をやり過ごす。他の村でもそうだったが、M55 はM60 と違って、村の外側を迂回していて、村の中心を通ることは無かった。その為、大きく南に回ったM55 が町から出てきた道と合流したが、それを戻って町に入る気はしなかった。
その後、向かい風は強くなった。そして霞んでいるのは森林火災と思われるように焦げた匂いと灰が舞ってきた。それからも幾つもの坂を登り下った。そして午後2時くらいだったと思う、村のガスステーションで水を買おうと思った。キャッシャーの老婦人は何が欲しいのだと強い口調で俺が何を言っても理解してもらえなかった。仕方ないので20ルーブルを出して水が欲しいと言うが、お金を取るわけでもなく水も出してくれなかった。水はそこにあるのに何が問題か分からない。20ルーブルで足りないのならそういう仕草をして欲しかったが、それも無い。
次の客が来たので店はありますかと聞くと、この先を左に曲がったところにあるという感じだった。言われたとおりに先に進むと店がみつかった。水のボトルを二つ、そしてラーメンなどを買って外に出たが、水はガス入りで酷く匂いのするものだった。一つは開けてなかったので返して洋ナシの描かれたものに替えたもらった。しかし、それは只のサイダーだった。仕方なく水用の青いボトルに入れ替えて走り出す。するとさっきの店の中に居た一人の客も出てきて、道の反対側に歩いて行く。この村には二つの店があると店の前で会った警官が言っていたので、その出てきた客と同じ方向に着いて行くと、看板がとても粗末な店があった。でも中に入ると、さっきの店に無かった物が沢山あった。俺はノートとフォークを買って出た。
最初のお店の外で会った若いカップルの女性は、俺の英語が少し分かったようだが俺の質問にはあまり答えてくれなかった。でも、近くにカフェがあるかという問いには7Km 先にありますと教えてくれたので、そこで食事をすることにした。そしてカフェは確かにあった。
駐車場は舗装されてないのであまり言い印象ではなかったが、トラックや珍しい大型バスも見えたので、これを逃すと次のカフェがどこか分からないので入ることにした。自転車を見えるところに置きたかったが、適当な場所が見つからず、自転車をカフェの中に入れた。どこでもそうだが、全員が俺のことを注目しているのが分かった。キャッシャーのカウンターに立って暫くウエイトレスが行き交うのを見たが、誰一人として注文を取ろうとしない。そのまま待つと、女主人らしき年配の女性が現れて最初しきりに何かを勧める。それがシャワーだと分かるのに暫くかかった。でも、俺は不要だと伝えるとメニューを出してくれたので、昨日と同じようにプローフを頼もうとしたが無かった。仕方なくその人が勧めるように注文するとライスに肉の入った料理が出てきた。他にはいつものようにボルシチ、紅茶などを頼んだ。注文する時に気付いたのだが、片言の英語が出来る男の人がテーブルに座っていた。同じテーブルに座りたいと聞くと快く椅子を勧めてくれた。その人はトラックのドライバで、中国まで荷物を取りに行くと言っていた。この先のウランウデまでは5日間かかると伝えると、シャワーを浴びれるのはこれが最後だから浴びたほうが良いと勧めてくれた。只、昨日120ルーブル支払って浴びているので入らないことに決めていた。そのドライバは中国で荷物を積んだ後、イルクーツクに戻るようで、イルクーツクに来たら電話して欲しい、と電話番号をメモ帳に書いてくれた。それから、俺の自転車に問題が無いのかと気遣ってくれた。そんな気持ちがとても嬉しかった。
カフェを出てから、いつものように坂を登って下って繰り返していると、随分と村と村との間隔が長くなってしまった。夕暮れになり、この先どれくらい走ったら次の村が出てくるか分からないので、道端の空き地にテントを張ろうと思ったが、道から見えてしまうのが嫌で諦めて先に進む。それから30分くらい走ったのだろうか。カフェの看板が見えた。駐車場に男の人が居たので、テントを張っても良いかと聞くと、食事はどうする、という感じだったので、食事はカフェで食べたいと言うと、テントを張っても良いことになった。カフェは質素なもので、当然のように客は居なかった。プローフを頼もうと思ったが無い。ライスも無い。仕方ないのでボルシチとサラダ、パンと紅茶等を夕食とした。
食べ終わると主人と思われる別の男の人はバーニャに入ったら良いと言う。最初はバーニャが何か分からなかった。でも、自分の体を洗う仕草で分かった。お金は幾らかと聞くと、気にするな、といった返事だった。駐車場に居た先程の人に案内してもらいボイラーの部屋に入った。中は真っ暗闇。でも、その案内してくれた人は別の建物の中にあるディーゼルエンジンをスタートして電灯を灯してくれた。このカフェには電気が無かったのかもしれない。きっとカフェにも電灯を灯す必要があったのだろうが、俺のことも気遣ってくれた事に違いなかったので有り難かった。
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